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荷物が出てきたが人が出てこない

 

マレーシャのペナンに海外出張二回目の時のこと。

 通関が必要な荷物があった。

 この時のチケットは、

 東京のお客様にお願いして手に入れた格安のもの。

 旅慣れていないこともあって、

 フライトがどのようなコースをたどるかも確認していなかった。

 

関空からマレーシャまでは約6時間のはず。

 ところが、2時間半後にどこかに着陸した。

 アナウンスがわからない。

 そこは台北であった。台北経由かあ~。まあいい。

 台北出発して、1時間半後にまた着陸。そこは香港だった。

 しょうがないなあ~。次はペナンだ(思いこみ)

 (この上、クアラルンプールも経由するなど思いもよらなかった)

約3時間、疲れもあって眠り込んだ。

 起きるともう着陸態勢。荷物の通関のことで頭がいっぱい。

 例によってアナウンスは???

 疑いもなく迷わずに降りた。入国審査を済ませ、

 荷物が回ってくるのを待った。

 しかし、いつまでたっても出てこない。

 こういうこともあるように聞いていた。

 どこか違ったところに行ってしまったのかな~?

 もう荷物を待つ人は誰もいない。

通りかかった職員に[私の荷物がない。調べて欲しい]と訪ねた。

 [チケットを見せろ]との返事。

 チケットを渡すと、

 ここはクアラルンプールだ、と言って去っていった。

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 どうしていいかわからない。

しかるべき場所で、

 30分ほど前に降りた飛行機に戻らなければならない、、、

 と伝えたが取り合ってくれない。

 当然のこと。入国審査も済ませている。

 国内線のターミナルへ移動して、

 次ぎのペナン行きに乗るしかない。

ペナンの空港には、私を迎えにきている。連絡をとらねば。

 いや、その前に、国内線のチケットを押さえなければ。

 このような時、パニックになっていて、判断が狂うこともある。

 国内線のターミナルへと急いだ。

といっても聞くしかない。

 クアラルンプールの空港が改築前であったので、

 バス乗り場も古めかしく、目立たないところにあった。

 ようやくバスに乗って国内線のカウターに着いた。

ペナン行きが一便残っている。

 15人ほどがカウンターに並んでいる。

 この時はまだ経験が浅く、

 行列に割り込みをお願いするほどの勇気もなく、

 15分ほど順番を待った。

フライトまで1時間半ほどあったので、何とかなると思いしや、

 ようやく順番がくると、満席とのこと。これは大変。

 キャンセル待ちの手続きをしたい”と言ったら、

 別のカウンターを指さした。

 向こうへ行け、という。

 そしてまた行列を待って、順番が来るも、指を指して、

 “あのカウンターへ行け” と言う。

先ほどのカウンターだ。どうしょうもない。もう一度並んだ。

 また15分、返事は同じ、指の方向は先ほどのカウンター。

 この時ほど英語力のなさに情けないと思ったことはない。

こういうときは、とんでもないことを考える。

 ペナンまでは300kmほど。

 タクシーでも夜10時くらいまでにはなんとかなる。

 案内所へ行って“ペナンまでタクシーで行きたい”

 と言ったが取り合ってくれない。

そして指はキャンセル待ちの方のカウンター。

 ほとほと困り果てた。

 もう一回掛け合ったみるかあ~。もう開き直った感じ。

 今度は意地をみせて、

 “私が、今日、ペナンに行ける確率は何パーセントか?”と質問。

答えは“120%”。ここでは、食い下がった。

 “向こうのカウンターでは満席と言っている。

 何故?”と聞き直した。

 その職員は “カウンターの中へ入れ” と言う。

 入るとスクリーンを指して、

 60席の空きがあることを示した。?????

大きな声で“Thanks!”と言って、

 最初のカウンターの裏側にある控え室に入っていって、

 責任者らしい年輩の職員に事情を説明した。

 彼は一度、カウンターのあるロビーに出て、

 誰かをにらみつけるように、何も言わず、引き返した。

 彼はすぐにペナンまでのチケットを発行してくれた。

 フライトの30分ほど前であった。

搭乗口へ急ぐ途中、

 ペナンへの電話を思い出し、かけようとしたが、

 マレーシャ通貨を持っていない。

 通りがかったクルーの方に千円を見せて、

 “コインを少々ください”と、お願いしたところ、

 “いいから” といって

 コインをいくらかめぐんでくださった。

 なんともまあ、みっともない。

 ペナンへ電話をしたが通じない。

 もう時間がない。そのまま飛行機に乗った。

 確かに空き席はいっぱいあった。

 40分がずいぶん長く感じた。

無事ペナンに着いた。荷物が先に着いているはずなので、

 事情を話して、荷物を受けとらなければならない、

 と思いながらウロウロ。

 出口では、Kさんと女性の職員が待ちかまえていた。

 “よかった、よかった”

 大失敗して迷惑をかけたにもかわらず、

 “無事着いて良かった”の連発だった。

ペナン側では、荷物だけ届いて人が届かない、

 と大騒ぎだったそうである。

 航空会社に伝手を探して連絡、

 台北、香港、クアラルンプール、と行方を捜したとのこと。

 それで、クアラルンプールで降りてしまったことがわかり、

 この便に乗ったことを知って、待っていてくれたのだ。

 

荷物をと言いかけたら、

 ”荷物の引き取りは既に終わっている”

 “さあ行こう” と言った。

Kさんはドイツ、アメリカ、中国、台湾、を

 一年中仕事で駆け回っている。

 英語は、

 ドイツ流、USA流、中国流、日本流、と使いこなす。

 でも、私の、こんなばかばかしい失敗を笑うような顔は、

 微塵もみせない。

 ホテルまでの車の中で、

 ペナン側での大騒ぎの一部始終を話してくれた。

 この時は、クアラルンプールでの私の右往左往を

  説明するだけの余裕はなかった。

今、私が、海外へ一人でかけて、

 曲がりなりにも、なんとか仕事をこなせるのは、

 Kさんが、

 辛抱強く英語でおつきあいしていただいたかげである。

 わからないと言えば、

 何回でも話し方を変えながら説明してくれる。

 

Kさんとの繋がりの基本には、

 仏教を禅風に捕らえた、世界観のようなものの共有があるから、

 と、感じている。

 たぶん、漢字圏の文化を共有しているのである。

食事のときには、中国、台湾、日本の

 歴史や政治や社会問題をよく話し合う。

 彼は、日本の歴史上の 節目、節目 のできごとにも

 めっぽう詳しい。

彼は、私が、

 旅先でこのような失敗を重ねることをよく知っているので、

 ペナンへ着くや、必ず私の帰りのフライトを確認する。

 台湾でも、中国でも、

 ミーティング中に“ダブルチェック”

 という言葉をよく耳にする。

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